作品紹介
マンガほっと独占インタビュー
北斗の拳 化粧まわし特別企画「横綱・稀勢の里 寛 × 北斗語り」


 第72代横綱・稀勢の里寛が、「北斗の拳」の化粧まわしを身に着け5月場所の土俵に上がる――!

 2017年3月6日。横綱として初めて迎える春場所直前、「北斗」に対する想いを語ってくれた。


◎強くなることは「孤独」であることだから「ラオウ」を選んだ――。



――横綱は「北斗の拳」の化粧まわしをつけると決まった際、主人公のケンシロウではなく「ラオウ」を希望されたと聞きました。まずはその理由を教えてください。

 注)「北斗の拳」の化粧まわしは横綱・稀勢の里が「ラオウ」の絵柄。太刀持ちは「ケンシロウ」、露払いは「トキ」の北斗三兄弟が描かれる。

 自分の性格的にはラオウっていうのがしっくりくるかなと。孤独で強いってイメージがありますし、存在感もあるし、なにより体もすごい! 力士であればこういう姿になりたいなって思いました。

 先代の親方(鳴戸親方)からも「孤独にならないと強くなれない」と言われていました。土俵の中に入れば誰も助けてくれない。強くなることは、ひとりになることなんだと思います。

 注)先代=故・鳴戸親方。第59代横綱・隆の里。


◎師匠こそが「ラオウ」だったのかもしれない――(笑)。



――ケンシロウにとって、ラオウは一番の「強敵」。横綱にとってそういう存在はいますか?

 19歳の時に朝青龍関と初めて対戦した時には、「オーラのようなもの」が見えました。当時は若かった事もありますし、初めて横綱と立ち会った時は、気迫とオーラに圧倒され…。今思い出すだけでもドキドキしますね。

――ケンシロウは尊敬する兄であるラオウを最終的に倒します。ご自身の中で、朝青龍関のオーラが薄まった瞬間などはあるのでしょうか?

 何回か勝った時っていうのは、オーラ的なものを感じなくなっているような気がしますね。辞め際の時も、同じようなことを感じました。

――今は、横綱に対して若い力士がオーラを感じているのではないでしょうか?

 常に、普段からオーラのようなものを出しておかないといけないと思っています。巡業もそうだし、生きてるところを、皆見ているので。そういう部分でも毎日をしっかりしていかないといけないですよね。オーラは、土俵の上だけでは作れるものじゃないと思っています。

――先代の鳴戸親方に対してのイメージはどのようなものでしたか?

 ただただ厳しかったですかね。本当に。厳しく指導してもらいましたし、師匠こそ「ラオウ」なのかもしれない(笑)。普段の生活もそうだし、ずっと相撲取りでしたね。

 それこそ孤独だったんじゃないですかね、師匠も。指導者然としているためには常に厳しい姿を見せなきゃいけないし、そういう師匠はすごかったですね。

 会話といえば「はい」っていうくらいしか、した事がなかったですからね。食事に行って「一杯飲めよ」と言われても「はいっ!」って会話しかできませんでした。

――ラオウは最後に恐怖を乗り越える為に、フドウと戦います。横綱は土俵の上で恐怖を感じた瞬間はありますか?

 怖さはありますよね。だからこそ毎日稽古してるわけで。でも、そういうものがない時が強い時なのかもしれない。今思うと、若い頃に比べて恐怖は段々無くなってきてるのかなとも思います。

――横綱になった後、今までとの違いは感じますか?

 全然違いますね。周りの反応もそうですし。ちょうど、コアミックスのじぞうビルに行った帰り、女子高生に反応されたときは、「この世代にも相撲を知ってもらってるんだな」って嬉しさはありましたね。

 注)2017年1月25日。帝国ホテルで横綱伝達式を終えた稀勢の里関は、その足で「北斗の拳 化粧まわし」の打ち合わせを行うため、編集部のある吉祥寺・じぞうビルに来社した。

 大関の時はそんなことなかったですから。ちょうど相撲界も低迷した時期でしたし。なので、相撲普及に繋がったのはよかったと思います。

 まだ、本場所を経験してないから、どんな感覚なのか分からないですけど、土俵入りが変わるし、綱打って、付き人の数も3倍くらいになりますので、まったく雰囲気も変わってくると思います。番付が下がらないっていうこと=後がないってことですから。ただ、相撲は変わらないと思いますけどね。

 注)その後、新横綱として迎えた3月場所で見事優勝。

――「相撲は変わらない」とハッキリと言い切れるのは?

 15年間ずっとこういうスタイルでやってきてますので、変わりません。師匠から「横綱になると景色が違うぞ」とよく言われていました。それがどういうことなのかはまだ分かりません。

 まぁでも普通に目に見えるものならば、支度部屋が一番奥の場所になるので、全体を見渡せるようになるっていうのは横綱にならないと分からないことですね。

 他のところでも見えるものが変わってくるのかなって、そしてそれはこれから気付くのかなと思います。ただ、師匠の言葉の本当の意味が分かるのはこれからじゃないでしょうか。

――先代の墓前に横綱になった報告は?

 「育ててくれてありがとうございます」という、感謝の言葉が自然と頭に浮かんできました。師匠もそうですし、周りの人に対してもそうです。実際に優勝して、横綱になってみて、その気持ちが強く湧いてきました。


◎「北斗の拳」は武道の精神――無になった方が勝つ。



――北斗神拳と相撲の共通点はありますか?

 相撲を取る時の表情っていうのはケンシロウの方ですね。無表情というか、感情を出さないというか、出たほうが負けるというか。

 先人から言われてきたことですが、「武道の精神」である究極に無の状態の方が人間は一番力が出ますから。

――ケンシロウはポーカーフェイスですからね。

 逆にラオウは表情に出ますよね。でも最後に強いのはケンシロウのような無表情なのかな…。

 ちょっと前までは自分も感情を出す、迫力のある男がカッコいいなって思うところがありましたが、今は常に平常心を保っているような人が素晴らしいなって思います。

 歴代横綱は、いずれもガッツポーズしてきたわけではありませんし。北の湖さんなどは表情ひとつ変わらないですからね。

 TVに出ないとかSNSもしないっていうか、それが力士なのかなって。力士は普通になっちゃいけない、一般の人に近くなっちゃいけないっていうのは昔から思ってます。

 普通の世界とは違うものを、お金を払って見にきてもらっているお客さんのためにも魅せる。それが正解か不正解かは分からないですけど。

――五月場所から「北斗の拳」の化粧まわしを付けて土俵に立ちます。原作のファンに向けて一言お願いします。

 着けてるだけで見えない力が湧いてくるような化粧まわしですので、生で見てほしいなって思います。すごくこだわって作ってもらってるので、ぜひ巡業でも本場所でも足を運んで見に来てほしいなと。

 素晴らしいキャラクターたちに恥じぬよう、気持ちで負けないようにしたいと思います。とても注目されると思うし、なによりも自分が一番楽しみにしています。



――ありがとうございました。


撮影:studio KEIF加藤慶